医療保険で使う言葉で社保・国保・保険者…など色々ありますが、何のことかよくわかりませんよね。
医療事務を勉強するまでは自分もそうでした。
みなさんが医療保険をもう少し上手に使えるように疑問にお答えしたい!
と言うことで、
今回は医療保険の種類と違い、補償を解説します!


社保?国保?後期?
種類と呼び方
公的医療保険制度には3種類に分けられます。
- 社会保険(社保)
- 国民健康保険(国保)
- 後期高齢者医療(後期)
社会保険を「社保」、国民健康保険を「国保」と略します。
社保のことを「健保」と言ったりもします。
あともう一つ、後期高齢者医療制度があります。「後期」と呼んでいます。
保険を運営しているところを「保険者」と言います。
加入している保険者から『保険証』が発行されます。
被保険者・被扶養者とは?
- 被保険者(本人)…医療保険に加入している本人。「本人」と言われます。
- 被扶養者(家族)…「本人」の扶養家族。「家族」と言われます。
「本人」「家族」と言うのは聞いたことがあるでしょう!
しかし、国保・後期では、被保険者の扶養家族は被扶養者にはなりません。
全員本人ということです。(国保組合は別・後で記述します)
社保・国保・後期の違いは?
社保と国保と後期の違いをまとめてみました。
社保
|
国保
|
後期
|
|
---|---|---|---|
加入者
|
会社員とその家族 公務員とその家族 教職員とその家族 |
自営業とその家族 農業、漁業者等とその家族 年金生活者とその家族 社保の加入者以外の方とその家族 |
75歳以上 65歳以上で障害がある人 |
保険者
|
会社 団体 |
自治体 その業種特定の組合 |
広域連合(都道府県) |
加入先
|
職場 | 市区町村 業種毎の国民健康保険組合 |
窓口は市区町村の役所 |
種類
|
協会けんぽ 組合健保 共済組合 |
市町村国保 国保組合 |
後期高齢者医療広域連合 |
社保・国保・後期以外にも組合とか共済とか聞きますよね。
自分は共済って言うけど、この3つには当てはまらないよって思われた方いませんか?
では社保・国保・後期をそれぞれみていきます。
保険証の「保険者名称」に注目したら、自分がどの保険かわかります。
社会保険(社保)
- 職場で加入。
- 会社員、公務員、教職員とその扶養家族が対象。
- 保険者は、会社や団体。
- 協会けんぽ・組合・共済の3種類。
- 任意継続制度(任継)がある。
社保には任意継続制度(任継)があります。
任意継続制度は、退職により社保の資格を失くしたあとも2年間は引き続き同じ健保に加入できるという制度です。
保険料の事業主負担がないため、保険料は全額負担。つまり離職前の倍になります。
協会けんぽ(全国健康保険協会)

- 「協会けんぽ」と言われます。
- 主に中小企業の会社員とその扶養家族が加入。
- 全国健康保険協会が運営しています。
- 水色のカード型の保険証です
組合健保(○○健康保険組合)

- 「組合」と言われます。
- 協会けんぽに加入している企業以外の会社員と、その扶養家族が加入。
- ひとつの企業で運営する組合と、同業他社と共同で運営する組合があります。
共済組合(△△共済組合)
- 「共済」と言われます。
- 公務員や教職員が加入。
- 各共済組合等が運営しています。
国民健康保険(国保)
- 市区町村・業種毎の国民健康保険組合で加入。
- 農漁業従事者等、年金生活者、社会保険の加入者以外の方その家族が加入。
- 保険者は自治体または特定の組合。
- 市町村国保・国保組合の2種類
市区町村国保

- 「国保」と言われます。
- 社保や国保組合の保険証を持っている方以外でその地域に住んでいるが加入します。
- 保険者は市区町村でその役所の「国民健康保険課」で手続きします。
- 1人1人が加入するので、加入者全員が「本人」。「家族」はありません。
- 定年退職~64歳の方は、退職者国民健康保険(退職者医療制度)になり、65歳から国民健康保険に変更となます。「国退」と言われます。
国保組合
- 「国保組合」と言われます。
- 歯医者さんなどが入る「歯科医師国保組合」、土木建築業者が入る「全国土木建築国保組合」などがあります。
後期高齢者医療制度(後期)
75歳以上の人と 65歳以上で一定の障害があると判断された人が加入するのが「後期高齢者医療制度」です。
そして75歳になるとすべての人が、医療保険制度から後期高齢者医療制度へ移行します。
移行するという言い方をするのは、「医療保険制度」と「後期高齢者医療制度」は法律が違うからです。

- 「後期」と言われます。
- 後期高齢者医療制度は、都道府県単位で設けられた広域連合が運営しています。
- 手続きは国保と同じで、住んでいる市区町村の役所の「国民健康保険課」です。
保険証の種類によって自己負担額や保険料は違うの?
- 自己負担額の割合は原則として同じ。
- 加入している公的医療保険の種類によって、毎月支払う保険料は違う。
自己負担額は全国どこでも平等
一般・低所得者 | 現役並みの 所得者 | |
75歳以上 | 1割 | 3割 |
70〜74歳 | 2割 | 3割 |
6〜69歳 | 3割 | |
0〜5歳 | 2割 |
基本的には全国どこでも医療機関での支払いは3割負担で、70歳を超えると割合が減っていきます。
子どもは住んでいる自治体によって助成制度があるので、さらに負担が減ることがあります。
その他にも難病や障害のある方、災害に遭った方が「公費」と言われる助成制度を受けられると負担が減ることがあります。
保険料の計算・支払い方法の違い
大きな違いはずばりこれ!
- 社保…毎月支払う保険料の半分を被保険者が、残り半分は事業主が負担する。
- 国保…保険料は被保険者が全額負担。
- 後期…保険料は被保険者が全額負担。
- 保険料は所得によって違う。保険者によっても違う。
社保の場合
毎月の給料やボーナスの金額で、保険料が決まります。保険料は本人と事業主で負担し、本人の支払い分は給与から天引きされます。
保険料は収入に比例して増えます!
保険料はお給料やボーナスの約10%前後ですが、事業主が従業員の保険料の半分を負担する義務があるので、本人負担は5%前後です。
組合健保の中には、保険料を多めに負担してくれるところもあるとのこと。
配偶者、子ども、親などを「家族」の扱いとして加えることもできます。
「家族」は保険料の支払いはありません。「家族」の数に関係なく、納める保険料は「本人」1人分です。
ただし、家族の収入額が多いと入れないこともあります。
任継は全額自己負担です。
会社を辞めたときは。任継と市区町村国保とどちらが保険料が安いか調べて選ぶと良いです。
市区町村国保の場合
年間の所得額で保険料が決まります。本人が支払う保険料の計算方法は、保険者によって違います。保険料は全額自己負担です。
保険料の支払いが難しいときには軽減措置が使えることも。役所に確認してみてください。
市区町村国保の保険料は、毎年6月ごろに送られてくる納付書を使うなどして自分で支払いをします。
市区町村国保の保険料は都市部より地方のほうが高いようです。
市区町村国保は家族であっても1人1人が加入者、つまり「本人」です。なので「家族」の扱いはありません。同じ国民健康保険でも国保組合は、「家族」とすることができます。
市区町村国保には「家族」という考え方がありません。ということは家族が多ければ多いほど保険料の総額は高くなります。
組合国保の場合
組合国保の保険料は収入に関わらず一定であることが多く、給料から天引きされます。
保険料は組合員の種類(事業主・従業員・家族)によって異なります。従業員の保険料は社保と比較すると高いことも。
そのため、社保のように従業員の保険料を一部負担してくれる事業所もあるようです。
後期高齢者医療制度の場合
所得によって保険料が違うのは国保と同じです。
保険料の支払いが難しいときには軽減措置が使えることも。役所に確認してみてください。
保険料は原則年金から天引きですが、自分で支払うこともできます。
また、年齢によって加入するので「家族」の扱いはありません。
例えばご主人が75歳、奥さんが72歳だとしたら、ご主人は後期、奥さんは社保または国保になります。
奥さんは75歳の誕生日から後期になります。
保険証の種類で受けられる保障にも違いがある
保険証があることで受けられる保証は医療機関で支払いが安くなるだけではありません。
社保と国保には受けられる保障の種類に違いがあります。
特に注意なのは、「傷病手当金」と「出産手当金」です。
傷病手当金や出産手当金があるのは健保と一部の国保のみとなります。
国民健康保険は原則として、この2つの保障はありません。
ただし、一部の市区町村は保障していることがあるので、要確認です。
国保と後期はほぼ同じです。
給付の内容 | 社保 | 国保 | 後期 | |
---|---|---|---|---|
療養の給付 | 保険証を持参すれば、かかる医療費の一部の負担だけで 治療を受けられる |
◯ | ◯ | ◯ |
療養費 | 医療費を全額立て替えたときに、 かかった費用の一部が払い戻される |
◯ | ◯ | ◯ |
高額療養費 | 医療費の自己負担額が高額になったときに、 決められた限度額を超えた分が払い戻される |
◯ | ◯ | ◯ |
移送費 | 医師の指示で緊急入院・転院したときに、 かかった費用の一部が払い戻される |
◯ | ◯ | ◯ |
傷病手当金 | けがや病気の治療のため仕事を休んだときに 給与の一部が給付される |
◯ | △ | ー |
出産手当金 | 出産のために仕事を休んだときに 給与の一部が支給される |
◯ | △ | ー |
出産育児一時金 | 子どもが生まれたときに支給される | ◯ | ◯ | ー |
埋葬費 | 本人や家族が亡くなったときに、埋葬費が支給される | ◯ | ◯ | ◯ |
社保と国保のメリット・デメリット
社保のメリット・デメリット
メリット | ・家族制度がある ・任意継続制度がある ・保険料が本人と事業者で折半 ・保険給付の内容が手厚い |
---|---|
デメリット | ・保険料が収入に比例して高くなる |
国保・後期のメリット・デメリット
メリット | ・市町村国保は他の保険には入っていない人みんなが加入できる ・後期は年齢・一定の障害ありで全員加入できる。 |
---|---|
デメリット | ・家族制度がない ・社保と比べて保険料が高い ・受けられない補償がある |
まとめ
大きくまとめてみました。
- 医療保険は社保・国保・後期の3種類。
- 全国どこでも医療機関で払う金額は同じ。年齢と所得によって違う。
- 保険料は保険者によって違う。
- 医療機関での支払いが安くなる以外の補償もある。
以上です。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
またね。